The free moment is associated with torsion between the pelvis and the foot during gait
The free moment is associated with torsion between the pelvis and the foot during gait. (2017).
Takahiro Ohkawa,Tomoaki Atomi, Katsuya Hasegawa,Yoriko Atomi
Gait & Posture 58 · September 2017 58, 415–420.
Impact factor:2.347 過去5年平均:2.286
動きの連動を捻れ(フリーモーメント)という視点から分析しており、ニュースリリースでは詳細が見えてこなかったので、本文読んだが、分析手法がやや荒いと感じた。こんな小さなモーメントがどこまで身体に対して影響するのだろう。
ただ、接地のねじれを定量し、摩擦との関連から分析したら、裸足ランニングはフリーモーメントの小さい走りになるかも。熟練度の指標になる?いずれにせよ、もう少し研究が深まる必要あり。junkaneko.icon
abstract
背景:歩行において、足部と地面の摩擦は下肢に捻れストレスとして影響するフリーモーメント(FM)を生じる。自然歩行におけるフリーモーメントを調査した研究は少ない。本研究の目的は足部と骨盤のFMと絶対・相対回旋角度について検討することである。
方法:18名の健常男性の足部と骨盤の回旋角度はモーションキャプチャー装置によって計測された。回旋角度は、反対下肢のFMの影響を評価するために右足・左足の下を通る足圧中心(COP)を繋いだ線に関してだけでなく、絶対・相対座標においても計測された。足部と骨盤の絶対・相対回旋角度はentered into forced- entry linear regression models(重回帰分析の強制投入法)でFMの影響について評価された。 知見:足部と骨盤の相対回旋角度だけが、有意に予測式を説明できた。両側のCOPを用いて定義された足部と骨盤の回旋角度は、ピアソンの相関係数では、FMと有意な相関ではなかった。FMと相関のある関節の回旋運動は無かった。
解釈:下肢全体の捻れは、股関節の内旋を介して実行されていると示唆された。FMを捻れストレスとして評価すると、一つのセグメントというよりはむしろ、下肢全体の回旋に着目することは有益である。
Intro
いくつかの関節症と歩行中の下肢関節の回旋に有意な関係があることが報告されている。さらに、関節症と脳性麻痺における捻れの特徴が明らかにされている。下肢骨に対する捻れストレスを理解することは重要であるが、異常な変形の病因は明らかになっていない。 一般的には、捻れストレスが骨形態と変形に影響を及ぼすと考えられている。歩行における下肢骨に発生するストレイン(歪み)の研究が実施されたが、そのような生体内での研究は被験者の侵襲手術を必要とし、物理的な負担を増やす。
近年、フリーモーメント(FM)は下肢の捻れストレスの指標として注目を浴びており、長距離ランナーにおける脛骨疲労骨折に関係があることが報告された。さらに、FMが脛骨の捻れ変形において、歩行中の地面反力鉛直成分(GRF)よりも大きな関係があると、Yan et al.は報告した。足底面は、地面と接触する唯一の面であり、二足歩行の間、摩擦が全身を推進させるために増加する部位である。捻れストレスは二足歩行において、下肢で発生し立脚期に回旋運動を引き起こす。従って、歩行中の過度なストレスは、下肢構造と関節運動において、悪影響を及ぼすことになるであろう。
摩擦に起因するFMは、足圧中心(CoP)座標に位置する垂直軸に対して、被験者に適用される捻れモーメントの応力として定義される(Fig.1a)。FMは下肢のトルクを直接定量化しないが、歩行中の下肢に対してかかる捻れストレスの意味ある指標として用いることができる。それゆえに、水平面においてストレスが多い歩行動作を理解するために、FMと歩行の特徴の関係性を明らかにすることが大切である。
Schoenhaus et al.が歩行中のFMと足部機能の関係を指摘したことから、歩行中の腕振りを制限する、もしくは意図的に足部を外旋させることで、ピークFM(PFM)が増えることを、2、3の研究は証明した。しかし、これらの研究結果は不自然な歩行パターンに基づいているため、臨床に応用するのが困難である。
Almosninoet al.は、3つの条件(自然歩行、内旋位、外旋位)で、FMと足部の絶対回旋角度にわずかな相関関係があることを報告した。 さらに、自然歩行から意図的に変えられた足部回旋角度で、相対的角度とPFM間に中程度の相関関係(r = 0.65)を報告した。 これらの知見から、足部角度がFMに影響を及ぼしている重要な要因であると考えられる。足部回旋角度は下肢の障害に関連があるかもしれないため、足関節の回旋だけでなく股関節の内外旋に関しても検討されなければならない。さらに通常歩行において、骨盤は股関節が回旋するため、わずかに水平面で回旋が起きる。 上記に示されたエビデンスに基づいて、歩行中骨盤の回旋と/もしくは下肢全体の捻れがFMの大きさに影響すると、我々は仮説を立てた。
さらに、Li et al.は、FMが両脚支持期でほぼピークに到達すると報告した。それゆえに、支持脚だけに着目するよりもむしろ、左右両方の下肢の位置関係を考慮する必要がある。したがって、本研究の主な目的は、自然歩行中のFMの大きさを下肢全体の捻れとして、足部と骨盤の間の相対的回旋角度、足部回旋角度、骨盤回旋角度の影響を明らかにすることである。我々は、両下肢のCoP座標を使って前述の関係と、FMと下肢関節の回旋の関係の影響をさらに検討した。
Methods
被験者
我々は、理学療法学科内で公募で被験者を募集した。被験者は健康でなければならなかった。そして、短い自主的な面接によって確かめられて、インフォームド・コンセントを提供しなければならなかった。除外基準は、歩行の妨げとなる下肢障害もしくは神経学的障害の既往歴であった。本研究の方法は、所属機関の研究倫理委員会の承認を得た。
実験装置
参加者は、およそ9mの歩行路を、至適速度で裸足で歩いた。フォースプレート上で足を適切な位置に置くため十分な練習が実施され、足の接地が成功した3つの試行が分析のために使われた。運動学的およびフォースプレートデータは、8つのカメラの3次元動作分析装置(VICON Nexus;Vicon motion system社製)、6枚のフォースプレート(Advanced Mechanical Technology社製)で取得された。フォースプレートと運動学的データのサンプリング周波数は100Hzで、それぞれ6と18Hzカットオフ周波数でローパスフィルターがかけられた。35個の反射マーカーは、Vicon Plug-in-Gaitモデルのマーカー貼付け位置に準じて解剖学的指標に貼付された。立脚期は地面反力鉛直成分の閾値を10Nとして定義した。FMは以下の式で計算された。
FM = Mz-Fy(CoPx)+Fx(Copy)
Mzはフォースプレートの中心の垂直モーメントを意味し、FxとFyはそれぞれ地面反力の左右方向・前後方向の成分を意味する。そして、CoPxとCoPyはフォースプレートのCoPの左右方向・前後方向成分である。正/負の(時計回り/反時計回り)FM値は、本研究において摩擦力が左足の外転/内転に抵抗していることを表している。先行研究では、身体的なパラメータ(一般的には体重(BW)、BW×身長、下肢長)で、FMを正規化していた。しかし、FMの適切な正規化に関してコンセンサスがない。体重によるFMの正規化は被験者間のばらつきを減少させることができると、Wannop et al.は報告した。したがって、我々は分析において体重でFMを正規化した。フォースプレートデータは、立脚期の被験者の間比較のために、101データ・ポイントで正規化された。FMの、絶対FM立脚曲線の面積である、力積(FMimp)は蓄積された捻れストレスの指標として計算された。
足部と骨盤の回旋角度の定義
立脚期における股関節、膝関節と足関節のピーク内外回旋角度は、Vicon Clinical Managerソフトウェアを用いて計算された。これらの角度に加えて、以下のように、足部と骨盤の回旋角度は定められた(Fig.1b)。足部の長軸は、第二中足骨頭のマーカーと踵のマーカーをつないだ線と定義された。骨盤の軸は、左右の上前腸骨棘マーカーをつないだ線と定義された。
前方推進方向の足部回旋角度(Foot-RAf)は、足の長軸と立脚中期の進行方向線の間の角度として計算された。これは、踵接地〜つま先離地の間で、地面反力の前後方向成分が最小で、ゼロに接近する点と一致した。前方推進方向の骨盤回旋角度(Pelvis-RAf)は、骨盤の軸と立脚期の進行方向線の間の最大角度と定義された。最初に左足のCoPが出現する点と右足の踵接地以降のCoPの最初の点をつないだ線と足部回旋角度の基準線間の角度(Foot-RAc)は、両脚支持期の間、各々の下肢への(FM)の影響の代表的な基準として算出された。最大骨盤回旋角度は、CoPの線に関して(Pelvis- RAc)、Foot-RAcと同様に算出された。最後に、足部と骨盤の回旋の相対角度(Foot-Pelvis-A)が、立脚期の骨盤軸と足部の長軸の間の最大角度と定義され、全下肢全体の捻れ指標として用いられた。
統計処理
3試行のデータの平均値が、分析の変数ごとの代表値として用いられた。FMと足部-骨盤の回旋角度にピアソンの相関係数を用いて各々の相関関係を確かめた後(| r | <0.9)、PFMとFMimpに対して各々の測定パラメータの影響を明らかにするための、強制投入ー線形回帰分析のためにFoot-RAf、Pelvis-RAfとFoot-Pelvis-Aが独立変数として用いられた。t検定は、Pelvis-RAfとPelvis-RAc間だけでなく、Foot-RAfとFoot-RAc間の差を確認するのに用いられた。さらに、ピアソンの相関係数は、FMと股関節・膝・足関節の最大の内外旋角度の関係を検討するために算出された。統計分析は、SPSS(ver21、IBM社製)を用いた。有意水準は0.05とした。
Results
被験者特性
18名の男性被験者は研究に同意して参加した。被験者属性の平均値(標準偏差 SD])は、以下の通りであった:年齢20.8 (1.1)歳; 身長172.7 (5.4)cm; 体重65.3 (6.9)kg。さらに、歩行速度と歩行率の平均は、1.3 (0.2)m/sと1.9 (0.1)歩/sだった。被験者の中で下肢疾患による痛み、または既往歴を持つものはいなかった。
FMにおける足部と骨盤の回旋角度の影響
イニシャルコンタクトの直後を除き、FMは二相波形(Fig.2)によって定義された。FMは、立脚期の前半は足部の内転に対する抵抗を意味し、後半は足部の外転に対する抵抗を意味する。測定変数の大きさと相関マトリクスは、table1.に示された。
PFMとFMimp間の相関関係を除くと、Foot- Pelvis-AとPFMの間に有意な負の相関があった(r =-0.69)。Foot-Pelvis-AとFoot-RAfは、FMimpとの間に有意な相関関係を示した(それぞれr =-0.73と0.49)。算出されたPFMの予測式(分散分析は有意差あり。R2 = 0.58)では、Foot-Pelvis-Aだけに有意な負の偏相関(ρ=-0.60、P= 0.01)があった、しかし他の従属変数(Foot-RAfとPelvis-RAf)には有意な偏相関(それぞれρ=-0.34,P=0.19とρ=-0.07,P=0.81)はなかった。同様に、FMimpの予測式(分散分析は有意差あり。R2=0.61)では、有意な負の偏相関(ρ=-0.58、P=0.02)がFoot-Pelvis-Aだけでみられた、しかし有意な偏相関はFoot-RAfとPelvis-RAfになかった。Foot-RAfとFoot-Pelvis-A間の相関係数が高く(r =-0.87)、Foot-RAfとFoot- Pelvis-Aの分散拡大要因が両方の予測式で約6であったので、多重共線性の存在は考慮に入れた。Foot-RAcとPelvis-RAcの相関係数は、Foot-RAfとPelvis-RAfより有意に大きかった(P < 0.01)。両下肢(Foot-RAcとPelvis-RAc)とPFMとPMimpの変数間には有意な相関関係がなかった。
下肢の回旋角度とFMの関係
股関節の最大内外旋角度の平均値(SD)は、それぞれ3.31°(9.78°)と5.89°(9.29°)であった。同様に、膝関節はそれぞれ8.45°(11.76°)と4.30°(12.43°)、足関節はそれぞれ0.07°(12.84°)と18.40°(8.96°)であった。PFMとPMimpと相関する関節はなかった。
Discussion
本研究は、自然歩行における、FMとして下肢全体の捻れ角と足部回旋角度、骨盤回旋角度の影響を評価するために行われた。Foot-RAf、Pelvis-RAfとFoot- Pelvis-Aは強制投入法によってPFMとFMimpの予測式に取り込まれたが、Foot-Pelvis-Aだけが十分に両方の予測式を説明することができた。多重共線性による回帰式の正確さの悪化が懸念されたが、PFMとFMimpに対するFoot-Pelvis-Aの積率相関係数は負の値で他の変数より高く、下肢全体の捻れが自然歩行中のFMの大きさを最も効果的に表すパラメータであると、我々は結論付けた。したがって、立脚期の支持脚に対して骨盤回旋が小さいほど、下肢に対するねじれストレスはより大きくなる。一方、FMへの足部回旋角度の関連性は、先行研究によって示されていた。この研究において、Foot-RAfとPFM間の有意な相関関係はなかったが、FMimpに有意な相関関係があった。Foot-RAfは、立脚中期における、前方推進方向に対する足の長軸の相対的な角度と定義された。しかし、足部はプッシュオフ期に、一般的に外側に回旋し、それは摩擦によって制御される。そして、瞬間的な一つの角度よりもむしろ連続的に足部回旋角を評価する必要がある。我々の仮説に反して、FMと、Pelvis-RAfとPelvis-RAcといった骨盤回旋角度との相関関係は確認できなかった。
トルクとして、Foot-Pelvis-Aで測定されるように、FMは単に骨盤回旋と比較するだけよりもむしろ下肢全体の捻れ運動について考慮されなければならない。さらに我々は、両側のCoP座標を用いて反対側の下肢への影響を検討した。
反体側の下肢への影響を検討するために、両下肢のCoPの位置を比較して計算されたFoot-RAcとPelvis-RAcは、FMと相関しなかった。したがって、この研究デザインでは、我々はFMの反対下肢への影響が低いと結論した。Pelvis-RAfとPelvis-RAc間だけでなくFoot-RAfとFoot-RAc間の相関係数に有意差があった。CoPの最初の点を連続して結ぶ線が前方推進方向に対して9.8°だったので、Foot-RAcとPelvis-RAcはFoot-RAfとPelvis-RAfより大きかった。したがって、Pelvis-RAfとPelvis-RAcの波形は類似していた(Fig.4a とb)、そして、それぞれの組み合わせに相関関係があった。Foot-Pelvis-AのSDは立脚期の80%から増加した。そして、地面反力鉛直成分の第2ピーク後の急速な減少に関係してそうであり、その間、足部は足と床の間の静止摩擦から解放され(踵離地〜つま先離地)外転方向に移動する(Fig.4c)。Foot-Pelvis-AとFM間の相関関係が明らかにされたが、下肢関節の回旋はFMと相関している従来のモデルから計算されなかった。この結果に基づいて、下肢全体の捻れストレスへの関節間での多様性が示唆された。さらに、前十字靭帯損傷、もしくは片側の人工膝関節全置換術の前後、FM値の変化が現れ、足底の表面のFMはどんな関節にも影響を及ぼすかもしれない。捻れストレスは、関節運動だけでなく脛骨自体にも影響を及ぼすかもしれない。脛骨捻れに関する関心は高く、先行研究では脛骨に対するFMの影響をが確認された。捻れストレスによるネズミの脛骨の微小なひび割れは、ねじる頻度よりもむしろ強度に依存すると、Forwood et al.はさらに報告したが、微小なひび割れは静的骨折強度よりもむしろ低強度の繰り返しによって誘発された。Cheng et al.は大腿骨前捻、脛骨内部の捻転、内転足の増加を伴う内股歩行がFMの減少に影響を及ぼすと、報告した。これらの報告は、日々の歩行動作中の過度なFMが骨リモデリングに影響を及ぼし、捻れ変形と関係していることを示した。先行研究やFig.2で示すように、大部分のFMの波形が二相だったが、この二相パターンに対する例外を確認した点に注目することは興味深い。本研究ではFMに関して運動学的分析を行ったが、FMの波形は、今後の研究において明らかにしなければならない問題であるが、歩行の動力学的特徴を表すかもしれない。
本研究の限界
我々の研究の限界は、明かす必要がある。今回、各々の足の最初のCoP点を結ぶ線を使ったので、両脚支持期の相互的な影響を完全には捕えなかったかもしれない。Li et al.は腕振りとFMの関係を明らかにし、両脚支持期における身体重心との関係を提案した。そして、測定側の下肢と反体側の下肢だけでなく、全身の運動を分析する必要があると報告した。さらに、我々は被験者特有の特徴(例えば大腿骨前捻と脛骨捻転)を考慮しなかった。また、FMの計測は被験者間の骨格軸の違いによって影響されるだけでなく、水平面での運動に強く影響する下肢のスティッフネスと弛緩性の違いにも影響される。この個人差は、本研究の結果に影響を及ぼしたかもしれない。最後に、FMが足部と床面の間での摩擦に起因するので、足底皮膚の摩擦特性と床面の状況はFMの波形にも影響を及ぼす。
結論
結論として、自然歩行における、立脚期の支持脚に対してより小さな骨盤回旋がより大きなFMをもたらすことを、我々は確認した。本研究において、下肢関節のいずれもFMと相関しなかった。しかし、三次元動作分析装置による水平面の運動の測定精度は、疑問の余地がある。Radler et al.は、歩行中、主に股関節が捻れ特性の動的な補償を受けると、結論した。本研究で定義されている下肢全体の捻れは、股関節の内旋によって、主に実行されるはずである。今回の知見は、歩行中の回旋運動によって引き起こされる下肢障害の理解の向上に繋がるだけでなく、運動障害のリハビリテーションにおいても重要である。
総評:B フリーモーメントという考え方を知るには良い機会だったが、分析手法がやや荒い印象を受けた。三次元動作分析のデータを臨床に生かすのは難しく、今後の研究次第で有益な指標になるかもしれないが、現状では基本的な運動学・動力学的データの補助的なものであると感じた。